2023年7月の記事一覧
令和5年度1学期 終業式 校長講話(令和5年7月20日)
これから夏休みに入るにあたり、先日の生徒会主催の壮行会でもお話しましたが、部活動については、この夏休み中の次なる上位大会、全国大会におきましても健闘を祈ります。自分たちの力が発揮できるように頑張ってください。また、写真部など展示・発表系の参加については、そこでの交流を通して今後の活動に活かせるように、他の地区の高校生たちから刺激を受けてください。
それでは、まず、これまでも学校通信などで伝えてきましたが、本校で実施されている取組、事業をあらためて2つ紹介します。
一つ目、本校では多文化共生推進事業という事業を進めています。おそらく、今学期当初に各クラスで紹介されたと思いますが、知っていますか? (先日もバドミントン大会を実施しました。)現在の社会は多様な文化背景を持ったもの同士の共生、共に生きていくために国際的な視点をもって、お互いに生活様式の違いや文化的背景などを理解しあうことが必要な時代です。そこではコミュニケーションをとるために、この日本で用いられている言語、日本語という言葉の理解が必要です。全国的に見ても私たちが生活している地域、戸田市、川口市、蕨市は特に多文化、多国籍の人々が共生している地域です。本校の2号館1階西側の教室を使用して、日本語支援員の方による、日本語を母語としていない生徒の皆さんに日本語学習の機会を提供しています。様々な文化の中で生活してきた人に対して、それぞれの文化を理解し、受け入れながら、戸田翔陽高校に通う皆さんが共生しながら生活してほしいと思います。このような学びの場があるのは、本校の大きな特色の一つです。この夏休みにおいても日本文化、異なる国の文化、について考える機会を持ち、ぜひ、互いの違いや共通することなどを考えてみてください。
二つ目、その2号館1階西側の教室、多文化共生推進事業の日本語教室の奥の教室では、こちらも以前に学校通信で紹介しましたが、地元の中学校ではなくて、異なる場での学びを求めている中学生やその保護者のために相談窓口を開設しています。これは、県教育委員会と戸田市教育委員会の連携による昨年度、令和4年度から始まった事業ですが、ひらがなで「いっぽ」という名前の学びの教室が開講されています。昨年度からの2年間の県の取組、モデル事業で今年度で終了の予定ですが、本校の校内で実施されていることですので、在校生の皆さんも承知しておいてください。
それでは、私から、夏休みという長期休業の前ということもあり、皆さんに「魚の取り方」ということについて、「学び方」ということに置き換えながら私なりに考えたことをお話しします。
昔、中国のとある(諸説あり、老子か)思想家の言葉に、「ある人に魚を一匹与えれば、その人は一日食える。魚の取り方を教えれば、その人は一生を通して食える。(授人以魚 不如授人以漁)」というものがあります。私は、「魚の取り方」を身につけるには、何が必要なのかを考えてみました。そして、「学び」に置き換えて「学び方」を身に着けるには、どうしたらよいか、それをその時、その時、考えながら身に着ければ、きっと一時だけではなく、一生、役に立つものと思いました。
「目先の結果、利益だけを考えずに、長期的な視点で物事を考え、一回限りのことではなく、やり方・方法を覚えれば、その後は仕組みを作り継続的に応用しながら取り組むことができるようになる。」ということだと思います。そのときは大変でも、長期的に考えると差は大きい。そして、ここでいう「魚の取り方」「学び方」ということが、今、皆さんに考えてほしいこと、また身に着けてほしいことと思います。長期休業前にあたり、ぜひ、考えてみてください。
学びには様々なものがあり、昨日までの講話(交通安全、ヤングケアラー、薬物乱用防止、性について)も高校生の皆さんにとっては、大きな学びの場です。とても大切で心に残るものばかりでした。教科で考えれば、国語の古典、また、地理・歴史を学ぶことにより、昔の人の考え方に触れたり、世界の中の日本の立ち位置を考えたりして、知恵を得ることができます。理科からものや生物のしくみを知り、数学の「学び」から、数字を使って計算したり、公式などを用いて物事を証明したり、論理的に考える思考力を養うことができます。外国語を学び、多くの人とコミュニケーションがとれるようになることで自分の社会を広げることができます。本校は総合学科なので、福祉の分野やビジネスの分野などの実用的、専門的な教科も選択教科として学んでいます。すべての科目を学ぶことで社会に出てから、どこかで役に立つことがあると思います。また、役立ててください。
本校の目指す学校像にあるように、「主体的に取り組み、多様性を尊重できる」成人になれるよう学んでほしいと思います。そして、こうして学んだ知識の掛け合わせにより新しいものが見えてきます。組み合わせを変えるなどして、いわゆる「創造」、物事を作り出すということ、に発展していくのだと思います。
一つ一つ積み上げていくことで、やがて、自分なりの「魚の取り方」を身に着けていくと思います。若いうちに積みあげていくことで、生涯、食べていけることにつなげていく「魚の取り方」を身に着けていってほしいと思います。それには、日々の努力が必要であり、積み上げていく「学び」の基礎があって、「学び方」を工夫することで、成長があるのだと思います。3部制という特徴を持った本校ですので、それぞれの持つ時間帯の中で、それぞれの「学び方」を工夫し、生み出してください。時間の使い方も大きな要素になると思います。
こんなふうに考えていきながら、結局、日々の授業に出席して積み上げていく、授業を休まない、遅れない、基本的生活習慣の定着が大切だということに行きつきました。基本中の基本です。例えば、きちんと起床し、食事をして、学習のリズムを作ることが「魚の取り方」の習得の第一歩になります。ぜひ、将来のために、今、「魚の取り方」を創造、作り出してほしいと思います。日々の授業に出席、休まない、遅れない、その繰り返し、それが基本的生活習慣となり、「魚の取り方」の習得につながります。
この夏休み、近いうちにインターンシップに参加する生徒もいると思います。せっかくの機会ですので、積極的に仕事を覚えて、自分のものにして、生きた体験をしてください。職場体験として、しっかり目的を持って臨んでください。介護職員初任者研修に取り組む人、介護、これからの社会では誰もが関わり、経験することですから、真剣に取り組んでください。また、進学を考えている人は自分にとって、どんな練習が必要なのか、しっかり考えて準備してください。あえて、言いますが、2年次生、1年次生は社会情勢の中で変化があり、大学進学の場合、入試の科目名なども現在の3・4年次生と異なってきます。新課程に対応した再来年度の2025年度入試以降、(例えば、もしかすると受検を考えている人がいるかもしれませんが、また、是非、チャレンジしてほしいところですが、)大学入学共通テストの教科・科目の再編など、大掛かりな変更があります。どんな風に変わるのか、ぜひ、自ら調べてください。教科「情報」が加わりますが、どのように利用されるのか。わかりにくいことは様々な人に聞きながら、依存しながら、いっしょになって何から取り組むべきか、考えながら今から準備してください。誰もまだ、進んでいないところなので、聞きながら進むしかありません。みなさんの進路は多様です。それぞれが「魚の取り方」を身に着けようと、準備してください。
保健だよりでは、「夏休みは大きなチャンス、もっと健康になるチャンス」、自分の身体の不十分なところがあれば、その手当ての時間を作ってください。地元のボランティア活動に参加する人もいるかもしれません。おおいに交流してください。
そうした経験も積み上げながら、みなさんそれぞれに合う「魚の取り方」、「学び方」を意識して考え、習慣として身に着け、みなさんの今後の糧にしてほしいと願っています。
最後になりますが一つ、注意をします。様々な準備をしたい夏休みですが、現実的なところで、その夏休みは、「楽しい」と「危険」が紙一重のところがあります。SNS等の使い方に注意し、また、アルバイトなどでも「高収入」「短時間」等の売り言葉にひっかからないように、しっかり判断できるように、自分の周囲の信頼できる人に相談しながら、尋ねるところは尋ね、頼るところは頼りながら、生活してください。
それでは、この夏休みを有意義に過ごし、暑さに負けずに、2学期始業式を元気に迎えましょう。 私の話は、以上です。