ご挨拶

2023年3月の記事一覧

令和4年度 第56回卒業証書授与式 式辞(R5.3.10)

 草木のつぼみもふくらみ、春の息吹を感じる今日の佳き日に、多くの保護者の皆様方のご臨席を賜り、「第五十六回卒業証書授与式」を挙行できますことは、卒業生はもとより、私たち教職員にとりましても この上ない喜びでございます。心より感謝申し上げます。

 そして、今、呼名されました160名の卒業生の皆さん、卒業おめでとうございます。皆さんは入学以来、私たち教職員とともに、この戸田翔陽高校の名前の表す通り、志を抱き、夢・希望・目標に向かって、力強く勇敢に飛翔し、(飛び立とうと、)これまで学校生活を送ってきました。今日という日までよく、努力してきました。そして、いよいよ、それぞれの進路に向けて旅立つ時が来ました。

 振り返ってみれば、みなさんは、この戸田翔陽高校における高校生活の中で、従来とは異なる形で、とても心に残る数年間を送ったと思います。コロナという感染症によって、「一斉休校」、臨時休校、さらに緊急事態宣言が発令される中で、「新しい生活様式」のもと「三密」を避けながらの生活を強いられました。社会状況に大きく影響を受けながら、やっと今日という日を迎えています。

 これまでの日々の生活の中で、皆さん一人ひとりが「今日という日の自分」に何かを付け加え、ほんのわずかなことでも少しずつ変化をつけて成長してきました。他人と比べるのではなく、一日一日「今日の自分を超えて」成長し、さらにはその力を周りの人と結集させてきました。「和して同ぜず」、まわりに流されることなく、みんなと協調しながらも自分らしく、たとえピンチのようなときでも「マイナスをプラスにしようとする」強い意志を持ち、「それならば、こうしてみようか」、と知恵をしぼって、その時々を乗り切ってきました。

 昨年、2022年4月1日から成年年齢が18歳に引き下げられ、みなさんには積極的な社会参加が期待されています。これからは社会生活する中で、みなさんには今まで以上に自己決定、自己選択が迫られます。正しい自己決定・自己判断と選択ができるようになるために、日々の学習が大切です。卒業してからも、就職や進学にかかわらず、まだまだ学び続けてください。人には、それぞれ強みや弱みがあります。その自分自身の強みや弱み、自分の個性を意識しながら、学び続けてください。

 我々、教職員にとっては、みなさんに送れるメッセージは今日で最後になりました。卒業にあたって、私から、最後に皆さんに伝えたいことがあります。これから就職するにしろ進学するにしろ、仕事や学習に取り組むときは、その使命や目的を持って取り組んでいくことが重要であるということを伝えたいと思います。

 

 今、この場において、「3人のレンガ職人」というイソップ寓話を紹介させていただきます。

 

 世界中を旅してまわっている、とある旅人が道を歩いていると、一人のレンガ職人がレンガを積んでいるところに出会います。

 旅人が「あなたは、何をしているのか?」と尋ねると、レンガ職人は、「見ればわかるだろう。親方の指示で、レンガを積んでいるのだ」と答えます。

 さらに旅人が歩いていくと、別のレンガ職人に出会います。

 また、「何をしているのか?」と尋ねると、二人目のレンガ職人は、「レンガで壁を作っているのさ。この仕事で家族を養うことができ、食べていけるのさ。」と答えます。

 旅人がさらに歩いていくと、また別のレンガ職人に出会います。

 また、「何をしているのか?」と尋ねると、三人目のレンガ職人は、「皆が集まる教会を作っているのさ。歴史に残る偉大な大聖堂をつくって、みんながお祈りしたり、多くの人が祝福を受けたりできるようにするのさ。」と、目を輝かせながら答えます。

 

 どうでしょうか。同じレンガを積むという作業でも、その目的や使命感のような意識の持ち方で意欲が変わってしまうのです。家族を養うという目的のために取り組み、作業することもよいと思います。仕事や学習に取り組むときは、三人目のレンガ職人のような使命や目的を持って取り組んでいくと、同じ作業でもいきいきとできるように思います。ぜひ、考えてみてください。使命や目的をもって、これからの社会において生きてほしいと思い、紹介させてもらいました。

 本日、みなさんが手にする卒業証書にはたくさんのものが詰め込まれています。高等学校までの学習を修了したことを表しているだけではありません。この世に生を受けて、ひとつの命として誕生してから、その証書を手にするまで、どれだけ多くの人たちの手助けがあったかを想像して、「感謝できる」人になってください。ご両親をはじめ、まわりの自分に関わってくれたたくさんの人たちがいてくれたことを忘れないでください。周りの多くの人たちの関わりがあってはじめて、本日受け取る卒業証書があることを心に刻んでほしいと思います。お願いと期待ばかりをこの場を借りてお話ししましたが、ぜひ、考えてみてほしいと思います。

 保護者のみなさま、最後になりましたが、改めてお祝いとお礼を述べさせて頂きます。お子様の高校生活は、今後の人生をどう生きるかを真剣に考える時期でありました。保護者の皆様の御苦労も並々ならぬものがあったことと思われます。それだけに、お喜びも、ひとしおのことと存じます。また、お子様の在学中には、本校の教育活動の充実・発展のため、多大なる御理解と御支援を賜りました。本当に有難うございました。この場をお借り致しまして心から感謝申し上げます。

 卒業生の皆さん、本校のメタセコイアの並木の隙間から見える、澄み切った青い空に向かって、みなさんの未来に向かって飛び立ってください。卒業生の皆さんが、生涯にわたって学び続け、社会で活躍できる「人財」となって、なにがしかの使命や目的を心に抱いて、この日本の輝かしい未来を創っていってくれることを期待いたしまして、式辞といたします。

 令和五年三月十日  埼玉県立戸田翔陽高等学校  校長 野口 幸男

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