校長室ブログ

2026年6月の記事一覧

6/29 AIにムッとした話

 このところほとんどお日様の姿を見ない日が続いていますが、お元気ですか。学校の方は今週から期末考査に入ります。試験前なのでこの前やっと再開した「こんなものを読んできた」もまたしばらく休みです。

 さて、前回、前々回の台風の記事で、「AIとムッと来るやり取りがあった」と書きましたが、それがどのようなものだったか、という話です。

①台風の上陸日時について分析するため、去年も利用したJCDPの台風データを使おうと思ったのですが、このデータは2019年までです。2020年以降を追加しようと思い、とあるAIに2020年以降に日本に上陸した台風の一覧を作成を頼みました。そうしたら一覧表を作ってくれたので、とりあえずチャットを閉じました。

②その後、データをまとめようとしたところ、なぜか先ほど入手したデータ一覧の2025年の3つの台風の上陸日の日付が「XX」となっていることに気が付きました。

③そこで再度AIとのチャットを開き、再度、2020年以降に日本に上陸した台風の一覧を求めました。今度も一覧を作ってくれましたが、なぜか2024年までしかデータが入ってていません。

④そのため「2025年のデータはどうなっているのか?」と聞いたのですが、そうしたら「2025年はまだシーズン途中なのでデータがない」と答えてきました。

⑤驚いて「今年は2026年だよ。気は確かですか?」と聞き返したところ、こんどは「気は確かだよ。ああ、今は2026年と言う想定なんだね」という感じの返事を返してきました。

⑥私が「いや想定ではなくて本当に2026年なのだ」と言っても、AIは、「今は2025年である。そのため2026年という未来から2025年という過去を振り返る設定で答えを求められても、答えはない」という主張を繰り返します。

⑦そこで私は前回のチャット(上の①)で作ってもらったデータを示して、「前回はこういうデータをもらった。このデータの「XX」になっているところを知りたいのだ」と、ピンポイントでリクエストしました。

⑧ところが、AIは「このデータは何らかの目的で作られた架空のものだ。」と言い返してきました。さらにこのデータの日時の部分が「XX」となっていることこそ、架空である証拠だ、と主張してきました。

⑨このままでは話がすすまないので、私は自分で気象庁のWebサイトを調べて、「2025年には間違いなく3つの台風が上陸した。その上陸日を知りたい」と質問しました。

⑩ところがAIはこれでも認めずに「架空データ説」を繰り返し、その根拠として「気象庁発表の公式データに2025年のデータはない」と断言してきました。

⑪そこで、私はさっき自分でデータを調べた(上記⑨)気象庁のページのURLを張り付けて「ここで調べたらちゃんとのっていた」と反論しました。

⑫そうしたところ、AIは一転して「あなたのデータが正しい。自分のデータが間違っていた。」と誤りを認めました。しかし、次はなぜ自分の間違ってしまったか(間違って当然だったか)の言い訳をはじめました。しかも偉そうに「なぜ、あなたが正しいか説明するね」的な口調で!!

 これだけ盛大に間違っておきながら「ごめんなさい」の一言もありませんでした。しかも上の⑧~⑩あたりのやり取りの際には、何となくAIの回答に「やれやれ物分かりが悪い人だけど、これも仕事だから丁寧に説明してあげなくては」、「噛んで含めるようにやさしく説明してあげます」的な偉そうな雰囲気が漂っている気さえします。これにはなかなかムッと来ました。

 最近、これからは人間が知識を蓄えなくてもAIが何でも教えてくれるから、AIを使う方法さえ知っていればよい、ということをいう人が沢山います。

 しかし、AIは時々、上のような大間違いをします。しかもそれを指摘してもなかなか間違いを認めません。このブログでは去年も蛾の種の同定をめぐるAIとのやり取りを紹介しました(2025/6/26「AIの反抗?①」2025/6/27「AIの反抗?②」)が、AIの往生際の悪さは相当なものです。

 私のような執念深い人なら、AIに間違いを認めさせるまで論争しますが、そんなにしつこくない人なら、途中で折れてAIの言い分を聞いてしまうかもしれません。 AIの言っていることが正しいかどうかを判断するために、人間には論理性と正しい基礎知識がこれまで以上に必要です。

 私は前から主張していますが、初等・中等教育の段階、若くて記憶力のいい時代にどれだけしっかりとした知識を詰め込めるかが大切です。知識・教養軽視の人がよく言う「地頭」とやらは、知識を蓄えた後に発揮すればいいですし、同じ「地頭」なら考える材料となる知識が豊富な方が有利に決まっています。今後もというか、今後こそ一人一人の頭の中に正しい知識を蓄積する教育が大切です。

 

 

6/26 「台風は早くなったか?」(続)

 台風の影響か今日もどんより湿っぽいですね。今回の台風は、学校が休みの土日の内に去ってしまいそうで、何よりです。

 さて、前回、「台風の来る時期は早くなったと言えるだろうか?」と言うことについて、私なりの見解を述べました。しかし家に帰ってからつらつらと考えたところ、「上陸日の平均日で見た結果では、納得しない人もいるかも」と思い当たりました。

 なぜなら、15歳と65歳の平均年齢は40歳、39歳と41歳の平均年齢も40歳です。「平均なんてインチキだろ」と言い出す人がいるかもしれません。データを見るときは平均だけでなくデータのバラツキ(分散)も見なくてはならないというのは基本です。

 前回の回帰分析や多重比較にも分散の要素はちゃんと入っているのですが、よりわかりやすくするために、台風の「もっとも早い上陸日」とか、「台風シーズンの長さ」を使った分析もしてみました。「シーズンの長さ」を問題にするのは、台風が来る時期が早くなる方だけでなく遅くなる方にも伸びているかもしれないからです。

 これを次のような方法で調べてみました。使っているのは今回もHADです。

① 1877年から2025年までのデータを3年や5年など一定の期間で区切り、その間の台風の一番早い上陸日、一番遅い上陸日、その差(台風シーズンの長さ)を求める。

※ここで3年とか5年の期間とするのは、台風が全く来ない年とか、1個しか上陸しない年もあるからです。

② ①で求めた日にちについて、回帰分析を行い、「台風の来る時期が早くなっていないか」や「台風シーズンが長くなっていないか」を検証する。

 結論として「台風が早く来るようになったとは言えない」という前回の結果は、今回も変わりませんでした。また、台風シーズンも長くなったとは言えませんでした。

 検証は、3年区切り、5年区切り、15年区切りで行い、いずれも同じような感じでしたが、以下に5年区切りの結果を上げておきます。

 

【台風の来る時期が早くなっていないか 5年区切り】

 上のグラフで見ると、各年の最初の台風の上陸の平均はおおよそ、4月1日から数えて80~90日目(7月末~8月初め)くらいです。しかし、年によるバラツキが大きいことが分かります。次にこれが「早くなってきているか」という点です。回帰直線(青い直線)はわずかに右下がりで係数は-0.137(毎年3時間くらい早くなる)となっていますが、p値は0.785です。この係数はほとんど信頼に値しないので、「早くなっているとは言えない」ことが分かります。

 

【台風シーズンが長くなっていないか 5年区切り】

  上のグラフで見ると、台風のやってくる季節の長さの平均は110~120日くらいです。しかし、こちらも年によるバラツキが大きいことが分かります。次にこれが「長くなってきているか」という点です。長くなっているのであれば、回帰直線(青い直線)は右上がりになるはずですが、係数は-0.104と逆にわずかに右下がりになっています。p値も0.853とほとんど信頼に値せず、「台風シーズンが長くなっているとは言えない」ということになります。

 

 

6/24 「台風は早くなったか?」

 今度の週末にもまた台風が来るようです。しかも二つも。土・日のうちに通過してくれればよいのですが、平日に来て臨時休校になったりすると、生徒の皆さんも学校としてもいろいろ大変です。

 さて、昔は台風のことを「野分」と言ったりしました。枕草子に「野分のまたの日こそ、いみじうあはれにをかしけれ(台風の次の日は、しみじみと趣深い)」とか書いてあったり(*)、源氏物語にも「野分」という帖(章)がありますが、「野分」とは野原の草を吹き倒す強い風のことで、秋のものとされています。

 台風=秋という認識だったわけです。それが今年は前回の5号と合わせて、6月に3つもやって来ます。そうなると世の中には、「こんなに台風が早く来るのは気候がおかしい。温暖化だ!大変だ!!(二酸化炭素狩りをしなくては…)」という話が出てくるわけですが、今回は少し落ち着いて「それは本当か?」ということを考えてみたいと思います。

  去年もこのブログで、「台風はだんだん強くなっているのではないか?」という仮説について考えました。(2025年4月28日)今回もその時のデータ(JCDPのデータセット)に最近数年分のデータ(気象庁等)を追加して考えます。(この追加データを巡って、とあるAIとなかなかムッと来るやり取りがあったのですが、それはまたの機会にします。)手順は以下のような感じです。分析には、前回と同じくHAD(関西学院大学の清水裕士先生が提供している統計分析ツール)を使わせていただきます。

①1877年から昨年2025年までに日本に上陸した台風のすべてについて上陸日を調べます。

②上陸日を4月1日を起点とする数字に変換します。(4月1日は1、2日は2とします。)

③上の②の4月1日起点日数を目的変数、西暦年を説明変数として、回帰分析を行います。

で、その結果が以下です。

 グラフ(散布図)を見ると、台風上陸日の平均は、4月1日から150日目前後(8月末から9月初め)です。グラフは見ての通り横長に四角っぽく広がっており、回帰直線も「やや右下がりかな?」という程度です。「年」の係数はー0.045なので、1年につき0.045日(約1時間)台風が来るのが早まっている可能性を示していますが、p値が0.232もあり、これでは「台風は年々早まっている」という仮説に十分な信頼性があるとは言えません。(仮説に信頼性があるとみなすには、一般的な社会現象などで0.05未満、厳密さを求められる医学や薬学などでは0.01未満が求められます。)

 もうちょっと大きなまとまりで見たらどうだろう、というわけで、観測期間を30年区切りで6期に分け、その期ごとに比較するというのも試してみました。グループ(期)間に有意な差があれば、仮説の信頼性を主張できるというわけです。

 

 その結果が上のグラフです。これはちょっといい感じに見えますが、第5期(1990~2010年代)のところでデータが反発していて、きれいな右下がりではありません。また各期の平均値の差が統計的に有意といえるかどうかを多重比較してみると、以下のようになります。

 一番、P値の低い1期(1870~90年代)と4期(1960~80年代)の比較でも0.1なので、こちらもあまり確かな仮説とは言えません。

 個別に見ても、過去には1956年の4月25日、1910年の5月11日などのデータがあり、われわれのイメージはともかくとして、今の段階で台風が来るのが早くなったとは言えないようです。

 ちょっと気になる点と言えば、第6期のデータのバラツキが大きい(グラフの分布範囲を示す縦線が長い)ことでしょうか。これは、台風が特定の期間に集中してくるのではなく、早い時期から遅い時期までばらけて来る(台風シーズンの長期化?)ということを表わしています。ただ、この第6期は、2020年からの6年分なのでデータ数が他の期よりも少ないということもあり、まだ何とも言えません(*2)。今後もっとデータが積み上がれば、はっきりするでしょう。

 いずれにせよ物事はイメージだけで語らず、きちんとデータ分析をすることが大切でしょう。

(*1)清少納言は、この後の部分で庭の柵や垣根、植込が荒れていたり、木が倒れたり枝が折れているのも面白いと言ったり、普段はすっと美しい人が、風の音で寝られなくて、ぼさぼさの頭でぼうっとしているのがすごくいい、と言ったりしています。なんというか超マニアックな人ですね。

(*2)念のためデータの個数の均等化を図って、15年刻みの10期に分けなおして比較してみましたが、有意水準ギリギリの0.049と0.043という組み合わせがいくつかあるだけで、ほぼ同じような傾向でした。

 

 

 

 

 

6/17 閑話 & こんなものを読んできた44

 昨夜の地震にはびっくりしましたね。わりと強い揺れだったこともともかく、スマホやタブレットが一斉になりだして、ちょっとパニック感がありました。いざというときに慌てない心構えを練らなくてはと思いました。

 さて、梅雨のこの季節、通勤途中の野原に小さなピンク色の花が咲いています。(ピントが後ろに抜けてしまいました。(-_-;))

 

 小さな花がらせん状に咲く、その名も「ネジバナ」というスズランの仲間です。この花については前任校のブログでちょっと書いた気がしますが、またの名を「モジズリ」や「シノブモジズリ」と言うそうです。

 それで思い出すのが、高校生のころ夏休みの宿題で暗記させられた百人一首の「陸奥(みちのく)のしのぶもぢずり誰ゆゑに乱れそめにし我ならなくに」(河原左大臣)という歌です。

 意味としては、「私の心は、陸奥の信夫文字摺り(信夫郡の特産品の乱れた模様の絞り染めの布)のように乱れてしまった。他ならないあなたのために」みたいな感じです。

 上のネジバナはそのねじれた様子が、絞り染めの布模様のようだということで別名「モジズリ」というようですが、とても清楚なたたずまいで、河原左大臣の歌の恋に夢中になって頭がグルグルしてしまっているような情熱的な感じとはちょっと似合わない気がするのですが…。

 百人一首の他の歌はほとんど忘れてしまいましたが、いくつか覚えているのが、この歌とか「ちはやぶる神代もきかず竜田川からくれなゐに水くくるとは」という在原業平の歌などです。こちらは「竜田川」というとても面白い落語のネタになっているので、よく覚えています。

 さて、一学期も落ち着いてきたので、読書案内の「こんなものを読んできた」を再開しました。再開第1回目は、いま売れているという町田その子さんの「コンビニ兄弟」です。

こんなものを読んできた44web.pdf

 

 

 

6/8 自然との関わり方

 1か月近く更新できないうちに、梅雨になってしまいました。今年の5月は比較的初夏らしい気持ちのいい日が多かった気がしたのに、梅雨その後はまた猛暑が来るかと思うとがっかりです。

 さてこの間、出張で六本木まで行ってきました。夕方、日が落ちてくると東京タワーがきれいです。

 

 

で、それもともかく、見ていただきたいのは、六本木ヒルズから見た近くの街並みです。

 都会の真ん中ですが、屋上やベランダなどちょっとした場所にも植木鉢やプランターで木が植えてあるので、以外と緑が豊かです。こういったところは日本の伝統的な良いところかなと思います。

 一方、昨年からの熊の被害が止まりません。昨日あたりからは宇都宮の住宅地や繁華街にクマが出没してニュースになっています。

 熊の世界に文化や伝承があるのかどうかは知りませんが、クマという種がヒトという種を恐れなくなってきているのではないか? という気がします。

 ほとんどの動物はヒトを恐れ警戒すると聞いたことがあります。それはおそらく我々人類の祖先が何百万もかけて、狩猟の技術を磨き、自分たちよりも強い生き物も知恵とチームワークで倒してきたからだと思います。この何百万年もかけて、他の動物の心に叩き込んできたヒトへの恐れが揺らいでいるのかもしれません。

 あとは、ヒトの活動圏が広がり過ぎて、動物たちの世界が狭くなりすぎたので、ちょっとしたことで人間側に溢れ出るようになってしまったのかもしれません。

 人と自然のバランスを考え直した方がいいのかも、と言う気がしますね。