校長室ブログ

4/28 前回「本を読んで気になったこと」の補足

 いよいよ春の連休に入りました。私は特に予定はありませんが、気が向いたら埼玉県内の行ってみたい神社や史跡をいくつか回るかもしれません。

 さて、前回、北村薫の「秋の花」を読んでいて、「小説の時代(1980年代末)と近年の間で台風の強さが強まったりしているのだろうか?」というのが気になったという話を書きました。

 そこで前回は台風の上陸時の平均気圧を求め、2010年代と1980年代の強さ(気圧の低さ)の平均の差を検定してみました。すると1980年代と2010年代の間の平均の差は、「有意とは言えない」という結果が出ました。しかし、前回掲載したグラフでは凸凹はあるものの、直感的にはなんとなく右肩下がりで台風は近年になるほど強くなっているような気がします。そこでもうちょっと手間をかけて統計分析をしてみました。

 統計分析ソフトには、関西学院大学の清水裕士教授がフリーで提供してくださっているHADを使いました。

 さて、今回はJCDPの台風データに入っている1877~2019のすべてのデータを使いました。「近年になるほど台風は強くなっている」というのを仮説、目的変数を上陸時の気圧「(hPa)」、説明変数を「年」として、単回帰分析を行います。散布図や回帰直線も表示するように指示をして、ポチっとすると、

【回帰係数】

【予測曲線】

こんな感じです。といわれても何のことやらわからないと思いますので、ざっと説明します。

 上の表で「切片」の係数「1087.623」、「年」の係数「-0.057」となっていますが、これは、ある年の台風の上陸気圧の平均値が、以下の式で予測されるという意味です。

 予測平均気圧=1087.623-0.057×年+誤差

そして、年の係数「-0.057」について、「p値」は「0.001=0.1%」で、これはこの係数が間違いである可能性は0.1%という意味です。したがって、この式はかなり信頼できるものといえます。

 下のグラフがこのデータを使い、年を横軸、気圧を縦軸にとった散布図です。

 点の分布にはかなりばらつきがありますが、なんとなく点の密度の高い黒っぽい部分が緩やかに右下がりになっているような感じです。また点の集まりが作る形も底の部分はなんとなく右下がりで、その年一番、二番の強い台風の強さが、少しづつ強くなっているイメージがあります。そして分布の真ん中を串刺しにするように青い回帰直線(上の式で表される直線で、このデータの変化の傾向を表している)が通っています。

 こちらの分析からは「近年になるほど台風は強くなっている」という仮説は正しい(間違っている可能性は極めて低い)、といえます。

 前回の分析とは結果が矛盾するようですが、これは見方というか視点の違いです。前回は1980年代と2010年代の二つの平均を比べると「平均の差があるとは言えない」という事でしたが、今回はより大きく1870年代からの150年間を見通すとどうか、という視点で見ています。そうするとやはり、だんだん台風は強くなってきている、という直感が裏付けられました。

 何年か前に西内啓さんの「統計は最強の学問である」という本が話題になったことがありますが、統計を使うと様々なことを分析できます。最近は高校の数学でも以前より統計に関する部分が増えましたが、学校での教え方は「各種統計数値の算出法を教えて、計算させる」という事になりがちです。しかし、統計について本当に勉強すべきは、「統計によってどんなことを調べられるのか」とか「統計的に有意」とはどういうことか、という本質だと思います。

 この辺をみんなが常識として持つようになれば、数年前のコロナ騒動は起きなかったかもと思います。しかし、どんなにきちんと統計的に証拠を示したとしても、世の中には自分に不都合なことは「そんなのただの計算だろ。屁理屈を言うな」といって拒否する人が多い(特に偉い人に)ので、同じことだったかもしれませんが。