7/29 いつの間にか無くなったもの(4) &「こんなものを読んできた46」
昨日の夕方の熊本の大地震には驚きました。電気や水道が止まっている地域もあるようです。この猛暑の中、避難生活を余儀なくされている方々の御苦労は大変なものだろうと思います。心よりお見舞いを申し上げます。
さて今日のお題は1年4か月ぶりの「いつの間にか無くなったもの」です。
無くなったものの一つ目は情報の信頼性です。
昨日の夜、テレビでニュースは熊本の地震のニュースに多くの時間を割いていました。川の水がバケツを揺らした時のようにバシャバシャ跳ね上がっているところとか、島原の眉山が崩落しているところとか、さまざまな被害の映像が流れていました。これを見ていて、以前だったら素直に驚いたり恐れたりしたはずなのに、最近は「この映像は本物か?」と疑う癖がついていることに気が付きました。最近は各地で災害が起きるたびに、フェイク画像や様々な偽の情報が流されます。学校の「情報」の授業では、ネットの情報はよく真偽を確かめなくてはいけない、と教えていますが、いまや何を基準に真偽を判断すればよいのか、ということが揺らいでいます。
メジャーなマスコミからネットニュースの類まで、現代では、あらゆる情報の信頼性が失われていることに気が付きました。
無くなったものの二つ目は「昆虫採集セット」です。
私が子供の頃は夏休みが近づくと学校近くの文房具店とかおもちゃ屋で「昆虫採集セット」というものを売っていました。
中身はセットの種類や値段によって異なるのですが、虫を殺すための薬剤、虫の標本が腐ったり虫に食われたりしないようにするための防腐・防虫の薬剤、これらを注射するための注射器と注射針、捕まえた虫を中に入れて殺すための毒びんなどが標準的で、高級なセットになるとチョウやガを捕まえて保管するための三角紙や三角缶、標本を作るための展翅台や展翅テープ、虫ピンなども入っていました。
昔の小学生は、これらを使って昆虫標本を作り、夏休みの自由研究として提出したりしたのですが、現代では自由研究で虫の標本を作る小学生もいなければ、そもそも子供用の「昆虫採集セット」など、どこを探しても売っていないでしょう(研究者向けの専門店で買うならともかく)。
これらが無くなった理由としては、虫が採れる草原や雑木林もめっきり少なくなったという現実的な問題や、生態系を守りましょうという自然保護的な観点などがあると思いますが、やはり一番大きなものは「生き物を殺すのは悪」という道徳的な観点ではないか、と思います。
「むやみな殺生は良くない」というのは、確かにその通りだと思います。しかし私個人の経験からは昆虫採集で得られたものも確かにあったと思います。
私は昆虫採集ではチョウが好きで、自宅の近所にいる種類は一通りを捕まえたことがあります。ルリタテハやミドリシジミなどの美しく採るのが難しいチョウを捕まえてきれいに標本にできたときなどは、すごく誇らしくてうれしかったのですが、ある時、それまで平気だった小さな生命を自分の手でつぶしていく感触が、どうにも後味が悪くなって、パタッと昆虫採集をやめました。
それ以来、虫は極力殺さないようにしています。ガガンボやカメムシ、クモ(昆虫ではないけど)などが家に入り込んだときも、「つぶせ!」「殺せ!」と叫ぶ家族をよそに、やさしく家の外に出してやるようにしているので、家族からの評判がよくありません。(蚊はさすがに叩いていますし、”G”はやらないと自分が家族にやられそうなので、やっつけていますが…)
また昆虫採集では、ある時、私の小学校でハチを捕まえてその大きさを競うというのが流行ったことがありました。花や樹液にやってくるハチを捕虫網でさらって素早く毒びん(上記)の中に放り込んで一丁上がりです(絶対マネしないでください。あえてやるなら自己責任でお願いします)。大きさと迫力がまるでプラモデルのようなオオスズメバチを捕まえた者は、英雄として尊敬されたものです。うっかり刺されると命にもかかわりかねない危険な遊びで、馬鹿と言えば馬鹿ですが、これはこれでいい経験だったと思います。
さて上の写真ですが、大型のハチの一種、クマバチ(クマンバチともいう)です。体が大きく迫力がありますが、おとなしくてめったに人を刺しません。怖がる必要はほとんどない虫です。スズメバチは毒が強く攻撃性も強くて危険ですが、これもこちらが怒らせるようなことをしなければ、まず襲っては来ません。この辺を知っていれば、何が危険か、どこまで安全かということが分かります。ところが最近の子どもは、虫が近くに飛んできたりすると、どんな種類かも考えずにむやみに大声を出したり手を振り回して追い払おうとします。スズメバチなどは脅かされると襲ってきますから、かえって危険です。
これまた私個人の経験ですが、昆虫採集(特にハチ狩り)をすることで、危険の程度を見積もり、落ち着いて対処する訓練が少しはできたような気がします。とはいえ、今は子どもが自由に虫を捕れる場所もなくなりましたから、やろうとしても難しいかもしれませんが…。
おまけは「こんなものを読んできた」の46回目、以前第36回で紹介した駄犬の「誰が勇者を殺したか」のシリーズ3作目「預言者の章」を紹介しています。以前にも書きましたが、駄犬(ひどいペンネームですね)という作者はすごく丁寧に人物描写をする人で、一般的なラノベより明らかに頭一つ抜け出ており、この小説もラノベ枠を超えた読みごたえがあります。こんなものを読んできた46(誰が勇者を殺したか 預言者の章)web.pdf
作者自身もラノベにこだわらず「いい小説」を書きたいと思っているようで、新作の「最後の魔法」と言う作品では、魔法というトリックは使いながらも、より一般的な小説の方に寄せています。とてもいい作家さんだと思います。