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校長室より 令和5年度3学期 始業式 校長講話(令和6年1月9日)
おはようございます(こんにちは、こんばんは)。
令和6年がはじまりました。始まったところで、年明け早々に、石川県を中心に能登半島地震が発生したり、羽田空港での日本航空(JAL)機と海上保安庁の航空機が衝突して炎上というような痛ましい事故が発生したりしました。そんな状況ですが、こうしてみなさんと3学期始業式を迎えられることを嬉しく思うと同時に、みなさんひとりひとりにとって、良い3学期になるよう、また、今年一年が良い一年になるよう、お祈りいたします。毎年のことですが、1月は新年の幕開けとしての節目の月で、同時に学校においては今学期始めから、みなさんそれぞれが上級の年次への進級さらに卒業に向けて、総まとめをする学期にもなるので、その覚悟で努力を期待したいと思います。
本日、私からは、皆さんの将来、これからを考えて伝えたいと思い、こんな状況だからもありますが、あらためて「防災意識の向上」と昨今の動きの中で「情報リテラシー」ということについて、お話ししたいと思います。
まず、「防災意識の向上」についてですが、今年度2学期始業式に、9月1日が防災の日ということ、さらに昨年が関東大震災からちょうど100年ということで、話しましたが、この正月を過ごして、あらためて防災意識を向上させることの必要性を感じました。どうしても日常の中で忘れがちになってしまいますが、一人ひとりの意識の中で、考えていかなくてはならないことと思います。今回の地震では崩壊した家屋の様子が比較的多く報道されるなどしています。被害のタイプの分析などがされていると思いますが、教訓として我々は今後の防災を考えていく必要があります。今も地震の影響で新潟県では、道路の陥没や泥水の噴出等の液状化現象による被害が出ているそうです。こうした地震、津波、大雨による洪水などの自然災害、火災なども含めて、国レベルの対策が必要であり、我々、一人ひとりの意識向上がさらに必要であると思います。自分の命を守る行動を具体的に様々な場面場面で考えておくこと、可能な限りの想定が必要だと思いました。ぜひ、みなさんも考えてみてください。
続いて2つ目、「情報リテラシー」について話します。皆さんが生活していく将来は、たくさんの情報が行きかう時代になると思います。すでに、現代社会もそうなっていますが、さらに情報過多の状況で、いかにして正しい情報を得ることができるかを、ぜひ、みなさんに考えてもらいたいと思いました。「情報リテラシー」における「情報」とは、私たちが日々受け取っているさまざまな知識や見識を指します。そして「リテラシー」とは、もともとは読み書きの能力を意味する言葉ですが、現代では、特定の分野に関する知識や能力を上手に活用する力という意味で広まっています。「情報リテラシー」とは、「情報を適切に判断して決定を下す能力」といえます。
私たち人間は自動車、インターネットなどを開発し、ここ数十年でスマホのような情報伝達機器を進化させてきました。最近では、生成AI(人工知能)のようなものも使い始めています。架空の画像を生み出す生成AIの技術も高まり、今後、情報の正しさや間違いの見極めが難しいケースが増えていくと思います。こうした開発、進化においては便利さ、効率性を追い求めてきた一方で、自動車についてはCO2の排出や騒音、さらには情報に関してはフェイクニュース、偽情報(にせじょうほう)・誤情報に振り回されてしまうようなことが発生しています。こういう時代だからこそ、先ほどの「情報リテラシー」、「情報を適切に判断して決定を下す能力」を養ってほしいと考えます。どうしたら、この能力を高められるでしょうか。考えてみてほしいと思います。
日常的に、物事に疑問を感じたり、調べるソースを複数持ったり、いろいろな方策があると思います。これまでにも、何度となく伝えてきましたが、日常の様々な授業で、また、みなさんの生活している様々な場面で、ぜひ、主体的に「思考力・判断力」を養うように心がけてみてほしいと思います。
以前にもお話しましたが、学校の授業では、例えば、国語の古典や歴史により、昔の人の考え方に触れたり、理科からものや生物のしくみを知り、数学から実証的説明の道筋や論理的思考力を養ってください。外国語を学び、多くの人とコミュニケーションがとれるようになることで自分の社会を広げてください。本校は総合学科なので、実用的、専門的な教科も選択教科として学んでいます。すべての科目を学ぶことで社会に出てから、どこかで役に立つことがあると思います。また、役立ててください。本校の目指す学校像にあるように、「主体的に取り組み、多様性を尊重できる」成人になれるよう学んでほしいと思います。データサイエンスというような学問も耳にします。正しい情報を得るための判断力を養うにはやはり、皆さんのような社会に出る前の今の時期に、日々の授業や学校行事などの様々なことを体験し触れながら、身につけていくものと思います。今年で18歳となり、いよいよ成人として社会では扱われるようになる者もいると思います。18歳以上の者には責任が伴い、自己決定・自己判断と選択が迫られます。正しい自己決定・自己判断と選択ができるようになることがより大切になってきます。そのために日々の生活・学習が重要になってきます。日々の生活・授業を大切にしてください。自分から学ぶ気持ちを大切にしてほしいと思います。
「防災意識の向上」および「情報リテラシー」、「情報を適切に判断して決定を下す能力」を向上させるには、どのような学びを実践していけばよいのか、いっしょに考えていきましょう。
まだまだ寒い冬が続きます。インフルエンザなどの感染症には引き続き注意してください。各自で健康観察・健康管理を行ってください。一人一人の努力が全員の安全につながります。それでは、令和6年が皆さんにとって素晴らしい年になるよう願って、わたしの話を終えます。
校長室より 令和5年度2学期 終業式 校長講話(令和5年12月22日)
○ おはようございます。(こんにちは。こんばんは。)
○ この2学期も本日で終了し、令和5年も残すところ10日をきりました。年末に向けて、世の中がせわしなく感じる日々ですが、みなさんの調子はどうでしょうか?
○ 私からは大きく2つ、お話させていただきます。1つ目は、2学期終業式ということで今学期を振り返りながらの話、2つ目は、その振り返りの中で私なりにも皆さんに伝えたいと思った「一期一会」ということにまつわる話をしたいと思います。
○ まず、1つ目、今学期を振り返ると、2学期は校内的にも大きな行事が続きました。まず、10月27日、28日に翔陽祭、文化祭が開催されました。「Restart. ゼロから始まる翔陽祭」のスローガンのもと、まだまだ感染症対策を施しながらでしたが、Restart ということで、中夜祭(夕刻からの陽が沈んだ中での発表)などの新しい試みも入れながら一般公開もできて、久しぶりの盛り上がりを見せてくれたと思います。続いて10月31日に体育祭を実施しました。PTAの皆様にも君たちの様子をご覧いただきました。今年は赤組、黄組、青組と3つの組に分かれて競い合い、お隣の同じ敷地内にある「戸田かけはし高等特別支援学校」の生徒さんたちも玉入れや綱引きに参加してもらいました。体育祭の方はなんとか無事に終了することができましたが、当日は、近所に火事やら物騒な事件があって、何機ものヘリコプターが上空を飛び回っていました。かえって、印象に残る出来事として記憶に残っています。
○ そして、つい先日ですが、2年次生が12月6日から8日の期間で長崎方面に修学旅行に行きました。昨年に引き続き期間中は天候にも恵まれ、平和学習や長崎近辺の文化に触れ、友人とも親睦を深められて、良い思い出となったことと思います。
○ さらに、先日の「カンジヤママイム(おしゃべりなパントマイム)」の芸術鑑賞会、パントマイムという芸を通して、人間だけが持つ「想像力」を活用して、その能力があるからこそ、感じることができる芸だとあらためて思いました。また、私たちへの「一期一会」などのような様々なメッセージが一つ一つの演技やお話に含んでいたように思います。君たちの感性、感じる心に響いていればよいなと思っています。それぞれの様子は本校HPに掲載されています。写真もありますので見てみてください。
○ そのほか、新しい生徒会役員の選挙、各部活動の活躍、各年次においての行事やみなさん自身、各自でいろいろ取り組んだ事があったと思います。校内での活動や行事の企画・運営にあたった担当生徒諸君や生徒会生徒、また、指導にあたられた先生方にはあらためて、感謝の気持ちを表します。ありがとうございました。
○ 2つ目の話に入ります。この2023年が終わるにあたって、年末になると、今年の漢字として租税の「税」という漢字(ちなみに日本漢字能力検定協会が発表)や活躍したスポーツ選手の「大谷翔平」選手、また「生成AI」とか「ChatGPT」というような、その年の流行りの言葉や活躍した人、話題になったものごとなどをよく耳にします。その中で、先ほどの振り返りにも少し触れました「一期一会」(いちごいちえ)という言葉について、少し掘り下げて話をしたいと思います。「一期一会」という言葉はもともとは、茶道の心得から来た言葉だそうです。安土桃山時代の茶人(ちゃじん)で、千利休の弟子が書き記した書物の中で「一期に一度の会」によるそうです。茶道においての一生に一度の会であるから心をこめてもてなすように、ということを表現しています。のちに、人との出会いを大切にするという意味の一般語として用いるようになったとのことです。
○ ちょうど私は「置かれた場所で咲きなさい」という言葉、本が気になって、調べているうちに渡辺和子(わたなべかずこ)さんという方が書かれたことがわかり、たまたまですが、同じ著者で「面倒だから、しよう」というタイトルの本を読んでいました。その本の中でも「一生に一度だけの巡り合わせ」という章があり、その中で「同じことは二度とない。だから、今という時を大切にする」という言葉があり、「一期一会」という言葉に通ずると思いました。例えば、まったく同じ楽団が同じ曲を同じホールで、同じ聴衆に向かって演奏したとしても、きっと昨日と今日では同じにはならないでしょう。同じようには奏でるでしょうが、まったく同じ演奏はできない。人間は全く同じことを繰り返すことはできない。一方、CDやDVDなどは同じことを繰り返します。これが人間と機械との違いの一つなのでしょう。人の繊細さと柔軟性を感じます。逆にCDやDVDは繰り返すことしかできない。そんなふうに考えると人間には同じこと、同じ出来事、場は一回しかない。だから、一回一回を丁寧にしたいものです。この本の中では、「人生で経験する出来事はどれもたった一度だけのこと。一つ一つの体験に心をこめましょう。」と書かれています。別の章では「一回一回が仕始めで、仕納め」と述べ、「毎回、新しい気持ちで取り組み、これが最後だと心して、一日一日をていねいに生きよう。」とうたっています。「一期一会」という言葉とこの書物の中の言葉、それぞれの意味していることは共通のように思います。「カンジヤママイム」での言葉から渡辺和子(わたなべかずこ)さんという方の書物の中の言葉に結び付けてみました。
「一期一会」、「同じことは二度とない。だから、今という時を大切にする」、
「一回一回が仕始めで、仕納め」
去っていく一年、来る一年、一年一年、一日一日、一つ一つの出会い、一瞬一瞬、一人ひとりを大切にしましょう。そんなふうにつながっていくと思います。
○ 最後に、2学期、そして2023年がもうじき終わります。1年次生は本校での生活に慣れてきたところかもしれませんが、気を抜かずに3学期を迎えてください。2年次生は次の年次の3年次に向けて、しっかり準備してください。3・4年次生の生徒の皆さんは、各自の新しい世界に向けて準備してください。残った高校生活において、もう一度、「一期一会」、「同じことは二度とない。だから、今という時を大切にする」、「一回一回が仕始めで、仕納め」、という言葉を思い出してください。不安やどうしたらよいかわからないときは、誰かに相談してください。良い意味で依存できるところを探してみてください。
○ 年明けの1月9日(火)からまた、学校が始まります。良い新年を迎えて元気に、登校できるように日々を過ごしてほしいと思います。2024年においては、何を今の自分に付け加えていくか、何かプラスαを見つけて、少しでもよいので挑戦し、失敗してもくじけずに、一日一日を大切にして、その繰り返しの中で成長することを期待します。
良い新年が迎えられることを願って、話を終わりにします。
校長室より 令和5年度2学期 始業式 校長講話(令和5年9月1日)
本日、9月1日より2学期が始まりました。夏休みは元気で過ごせたでしょうか?夏休み中の皆さんの活躍として、部活動では各大会等での結果、がんばりを聞きました。暑い中、ご苦労様でした。また、全国高等学校総合文化祭出品・派遣の写真部やバドミントン部および剣道部の埼玉県代表で団体戦メンバーとして出場し、それぞれ全国大会3位入賞の報告、さらに教科で福祉科の関東地区福祉研究発表会福祉研究部門での入賞、県発表会介護技術部門での入賞、商業系での資格取得などでがんばっているみなさんの活躍を耳にするとうれしく思いました。
さて、今日から2学期が始まります。本日も放送による始業式となりました。まだまだ気温が高く熱中症対策が必要な状況です。また、感染症拡大防止についても引き続き、各自が注意しながら生活してほしいと思います。
2学期は、大きな行事を挙げれば、来月10月11日から中間考査、そして10月27日、28日翔陽祭(文化祭)とその後の体育祭、11月29日から期末考査、それが終わってすぐの12月6日からは2年生の長崎方面を中心とした修学旅行、そして12月22日が2学期終業式となっています。それぞれの行事については、ぜひ、油断をせずに、ひとつひとつの工夫した企画運営とみなさん各自の適切な行動をお願いします。
さて、講話に入りますが、一学期始業式では、ある車椅子生活をされている小児科の医師の言葉「『自立』とは『依存』先を増やすこと」を紹介しました。一学期終業式では、中国のとある(諸説あり、老子か)思想家の言葉「ある人に魚を一匹与えれば、その人は一日食える。魚の取り方を教えれば、その人は一生を通して食える。(授人以魚 不如授人以漁)」を紹介しました。
今日は、9月1日という日に、ちなんだお話をさせてもらいます。
ここ数年はコロナをはじめ、天気予報などでは線状降水帯といったような用語が用いられ天候不順についての話をよく耳にしましたが、現在も台風シーズンの最中ということで、今日、9月1日は「防災の日」と定められています。防災の日は、昭和35年(1960)年6月11日の閣議で、9月1日を防災の日とすることが決められたことに始まります。今日は、この防災について、少しお話しします。
まず、9月1日を防災の日とした経緯について、調べてみました。
9月1日は、関東大震災が発生した日であるとともに、暦の上では二百十日に当たり、台風シーズンを迎える時期でもあり、また、昭和34(1959)年9月26日の「伊勢湾台風」によって、戦後最大の被害(全半壊・流失家屋15万3,893戸、浸水家屋36万3,611戸、死者4,700人、行方不明401人、傷者3万8,917人)を被ったことが契機となって、地震や風水害等に対する心構え等を育成するため、防災の日が創設されました。そして、昭和35年6月の内閣の会議である閣議で了承され、9月1日発行の官報でも次のように記述されました。
「政府、地方公共団体など関係諸機関はもとより、広く国民の一人一人が台風、高潮、津波、地震などの災害について、認識を深め、これに対処する心がまえを準備しようというのが、『防災の日』創設のねらいである。もちろん、災害に対しては、常日ごろから注意を怠らず、万全の準備を整えていなければならないのであるが、災害の発生を未然に防止し、あるいは被害を最小限に止めるには、どうすればよいかということを、みんなが各人の持場で、家庭で、職場で考え、そのための活動をする日を作ろうということで、毎年9月1日を『防災の日』とすることになったのである」と、制定の主旨が記されています。
今、話に出てきた関東大震災については、皆さんは歴史で学んだかもしれません。
今からちょうど100年前の1923年(大正12年)の9月1日に関東大震災という大きな地震が、我々の住んでいる関東地方に襲い掛かりました。
100年前の1923年9月1日土曜日、時間は11時58分の昼の時間帯です。相模湾北西部を震源とする、規模がマグニチュード7.9と推定される関東大震災が発生しました。この地震により、埼玉県、千葉県、東京都、神奈川県、山梨県で震度6を観測したほか、北海道道南から中国・四国地方にかけての広い範囲で震度5から震度1を観測し、10万棟を超える家屋を倒潰(とうかい)させました。また、発生が昼食の時間と重なったことから、多くの火災が発生し、大規模な延焼火災(えんしょうかさい)(火災で火が別の建物や地域に燃え広がること)に拡大しました。
この地震によって全壊、全焼の被害を受けた住家は総計約29万棟(資料によって若干の差があり)にのぼり、死者・行方不明者は約10万5000人に及び、甚大な被害をもたらしました。ほとんどが焼死です。近年の大震災と比べてみます。
みなさんにとって、記憶があるかわかりませんが、12年ほど前の2011年3月11日、金曜日午後2時46分に東日本大震災が発生しました。この地震で亡くなった人、行方不明者は、約1万8000人(9割が溺死、津波でおぼれて亡くなる)その関連で亡くなった人が約3800人、約2万人がなくなりました。全壊、全焼の被害を受けた住家は約12万棟。(その後の津波等による被害を含めて約41万棟の被害とされる)
さらに1995年(平成7年)1月17日火曜日、午前5時46分、阪神・淡路大震災がおきました。この地震で亡くなった人、行方不明者は、約5500人(7割が窒息、圧死、倒壊した建物などで押しつぶされた)、その関連で亡くなった人が約900人、全壊、全焼の被害を受けた住家は約11万棟とされています。
ちょうど100年前の関東大地震、全壊、全焼の被害を受けた住居の数、死者・行方不明者が約10万5000人という数字。その被害規模と社会経済的なインパクトは極めて大きかったことが分かります。(GDP(Gross Domestic Productの略称で、「国内総生産」のことで、一定の期間に国内で生産された物やサービスの「付加価値」の合計)比で35.5%、阪神は2.1%、東日本は3.3%)
「防災の日」と関東大震災について、紹介しました。このように地震や台風も含めて、自然の災害から身を守るのは私たち、一人一人です。身を守るにはどうしたらよいか、今後、本校でも避難訓練等も計画されています。いろいろ制限が多いところですが、ぜひ、みなさんも本日の「防災の日」に災害に備える機会としてとらえ、また、過去の記憶、教訓として100年前の被害甚大な出来事も含めて、学び、考えてみてください。大切な命を守る行動をどのようにすればよいのか、いっしょに考えていけたらと思います。
最後になりますが、各年次において、2学期はいろいろ取組、行事があると思いますが、先生方の連絡をしっかり聞き、指導を守りながら、皆さん一人ひとりが自らを成長させ、さらにはみなさんでその力を結集させて連携・協力して充実した2学期にしてもらいたいと思います。特に3年次生、4年次生は進路選択において重要な時期となってきます。たとえ1度、2度の失敗などがあってもくじけず、頭を切り替えて、担任の先生、進路の先生、就職支援の先生方などの助言をいただきながら、次の対策に粘り強く取り組んでください。1、2年生はそれぞれの取組にわずかでもよいので、プラスの成長を意識しながら、それを結集させて生活してください。それぞれの健闘を祈ります。
私からの話は以上です。
令和5年度1学期 終業式 校長講話(令和5年7月20日)
これから夏休みに入るにあたり、先日の生徒会主催の壮行会でもお話しましたが、部活動については、この夏休み中の次なる上位大会、全国大会におきましても健闘を祈ります。自分たちの力が発揮できるように頑張ってください。また、写真部など展示・発表系の参加については、そこでの交流を通して今後の活動に活かせるように、他の地区の高校生たちから刺激を受けてください。
それでは、まず、これまでも学校通信などで伝えてきましたが、本校で実施されている取組、事業をあらためて2つ紹介します。
一つ目、本校では多文化共生推進事業という事業を進めています。おそらく、今学期当初に各クラスで紹介されたと思いますが、知っていますか? (先日もバドミントン大会を実施しました。)現在の社会は多様な文化背景を持ったもの同士の共生、共に生きていくために国際的な視点をもって、お互いに生活様式の違いや文化的背景などを理解しあうことが必要な時代です。そこではコミュニケーションをとるために、この日本で用いられている言語、日本語という言葉の理解が必要です。全国的に見ても私たちが生活している地域、戸田市、川口市、蕨市は特に多文化、多国籍の人々が共生している地域です。本校の2号館1階西側の教室を使用して、日本語支援員の方による、日本語を母語としていない生徒の皆さんに日本語学習の機会を提供しています。様々な文化の中で生活してきた人に対して、それぞれの文化を理解し、受け入れながら、戸田翔陽高校に通う皆さんが共生しながら生活してほしいと思います。このような学びの場があるのは、本校の大きな特色の一つです。この夏休みにおいても日本文化、異なる国の文化、について考える機会を持ち、ぜひ、互いの違いや共通することなどを考えてみてください。
二つ目、その2号館1階西側の教室、多文化共生推進事業の日本語教室の奥の教室では、こちらも以前に学校通信で紹介しましたが、地元の中学校ではなくて、異なる場での学びを求めている中学生やその保護者のために相談窓口を開設しています。これは、県教育委員会と戸田市教育委員会の連携による昨年度、令和4年度から始まった事業ですが、ひらがなで「いっぽ」という名前の学びの教室が開講されています。昨年度からの2年間の県の取組、モデル事業で今年度で終了の予定ですが、本校の校内で実施されていることですので、在校生の皆さんも承知しておいてください。
それでは、私から、夏休みという長期休業の前ということもあり、皆さんに「魚の取り方」ということについて、「学び方」ということに置き換えながら私なりに考えたことをお話しします。
昔、中国のとある(諸説あり、老子か)思想家の言葉に、「ある人に魚を一匹与えれば、その人は一日食える。魚の取り方を教えれば、その人は一生を通して食える。(授人以魚 不如授人以漁)」というものがあります。私は、「魚の取り方」を身につけるには、何が必要なのかを考えてみました。そして、「学び」に置き換えて「学び方」を身に着けるには、どうしたらよいか、それをその時、その時、考えながら身に着ければ、きっと一時だけではなく、一生、役に立つものと思いました。
「目先の結果、利益だけを考えずに、長期的な視点で物事を考え、一回限りのことではなく、やり方・方法を覚えれば、その後は仕組みを作り継続的に応用しながら取り組むことができるようになる。」ということだと思います。そのときは大変でも、長期的に考えると差は大きい。そして、ここでいう「魚の取り方」「学び方」ということが、今、皆さんに考えてほしいこと、また身に着けてほしいことと思います。長期休業前にあたり、ぜひ、考えてみてください。
学びには様々なものがあり、昨日までの講話(交通安全、ヤングケアラー、薬物乱用防止、性について)も高校生の皆さんにとっては、大きな学びの場です。とても大切で心に残るものばかりでした。教科で考えれば、国語の古典、また、地理・歴史を学ぶことにより、昔の人の考え方に触れたり、世界の中の日本の立ち位置を考えたりして、知恵を得ることができます。理科からものや生物のしくみを知り、数学の「学び」から、数字を使って計算したり、公式などを用いて物事を証明したり、論理的に考える思考力を養うことができます。外国語を学び、多くの人とコミュニケーションがとれるようになることで自分の社会を広げることができます。本校は総合学科なので、福祉の分野やビジネスの分野などの実用的、専門的な教科も選択教科として学んでいます。すべての科目を学ぶことで社会に出てから、どこかで役に立つことがあると思います。また、役立ててください。
本校の目指す学校像にあるように、「主体的に取り組み、多様性を尊重できる」成人になれるよう学んでほしいと思います。そして、こうして学んだ知識の掛け合わせにより新しいものが見えてきます。組み合わせを変えるなどして、いわゆる「創造」、物事を作り出すということ、に発展していくのだと思います。
一つ一つ積み上げていくことで、やがて、自分なりの「魚の取り方」を身に着けていくと思います。若いうちに積みあげていくことで、生涯、食べていけることにつなげていく「魚の取り方」を身に着けていってほしいと思います。それには、日々の努力が必要であり、積み上げていく「学び」の基礎があって、「学び方」を工夫することで、成長があるのだと思います。3部制という特徴を持った本校ですので、それぞれの持つ時間帯の中で、それぞれの「学び方」を工夫し、生み出してください。時間の使い方も大きな要素になると思います。
こんなふうに考えていきながら、結局、日々の授業に出席して積み上げていく、授業を休まない、遅れない、基本的生活習慣の定着が大切だということに行きつきました。基本中の基本です。例えば、きちんと起床し、食事をして、学習のリズムを作ることが「魚の取り方」の習得の第一歩になります。ぜひ、将来のために、今、「魚の取り方」を創造、作り出してほしいと思います。日々の授業に出席、休まない、遅れない、その繰り返し、それが基本的生活習慣となり、「魚の取り方」の習得につながります。
この夏休み、近いうちにインターンシップに参加する生徒もいると思います。せっかくの機会ですので、積極的に仕事を覚えて、自分のものにして、生きた体験をしてください。職場体験として、しっかり目的を持って臨んでください。介護職員初任者研修に取り組む人、介護、これからの社会では誰もが関わり、経験することですから、真剣に取り組んでください。また、進学を考えている人は自分にとって、どんな練習が必要なのか、しっかり考えて準備してください。あえて、言いますが、2年次生、1年次生は社会情勢の中で変化があり、大学進学の場合、入試の科目名なども現在の3・4年次生と異なってきます。新課程に対応した再来年度の2025年度入試以降、(例えば、もしかすると受検を考えている人がいるかもしれませんが、また、是非、チャレンジしてほしいところですが、)大学入学共通テストの教科・科目の再編など、大掛かりな変更があります。どんな風に変わるのか、ぜひ、自ら調べてください。教科「情報」が加わりますが、どのように利用されるのか。わかりにくいことは様々な人に聞きながら、依存しながら、いっしょになって何から取り組むべきか、考えながら今から準備してください。誰もまだ、進んでいないところなので、聞きながら進むしかありません。みなさんの進路は多様です。それぞれが「魚の取り方」を身に着けようと、準備してください。
保健だよりでは、「夏休みは大きなチャンス、もっと健康になるチャンス」、自分の身体の不十分なところがあれば、その手当ての時間を作ってください。地元のボランティア活動に参加する人もいるかもしれません。おおいに交流してください。
そうした経験も積み上げながら、みなさんそれぞれに合う「魚の取り方」、「学び方」を意識して考え、習慣として身に着け、みなさんの今後の糧にしてほしいと願っています。
最後になりますが一つ、注意をします。様々な準備をしたい夏休みですが、現実的なところで、その夏休みは、「楽しい」と「危険」が紙一重のところがあります。SNS等の使い方に注意し、また、アルバイトなどでも「高収入」「短時間」等の売り言葉にひっかからないように、しっかり判断できるように、自分の周囲の信頼できる人に相談しながら、尋ねるところは尋ね、頼るところは頼りながら、生活してください。
それでは、この夏休みを有意義に過ごし、暑さに負けずに、2学期始業式を元気に迎えましょう。 私の話は、以上です。
令和5年度埼玉県立戸田翔陽高等学校 第59回入学式 式辞 (R5.4.11)
暖かい春の日差しを浴びて色とりどりの春の花があふれんばかりに咲き誇る今日の佳き日、保護者の皆様のご臨席も賜り、令和5年度埼玉県立戸田翔陽高等学校 第59回入学式を挙行できますことは、本校にとりまして、大きな喜びとするところであります。
ただいま、入学を許可いたしました213名の生徒の皆さん、入学おめでとうございます。本校の教職員並びに在校生を代表して、皆さんの入学を心から歓迎いたします。
本校は、学ぶ意欲と熱意のある者が、自らの学習スタイルに合わせて、学ぶ3部制、単位制、総合学科の高校です。
校名である戸田翔陽高校の翔陽とは、本校生徒たちが志を抱き、夢・希望・目標に向かって、力強く勇敢に飛翔していくことを願って名づけられたものです。
本校入学に際して、本日、この場をお借りして、皆さんに「自立」ということについて、お話ししたいと思います。在校生には昨日の一学期始業式においてお話ししたことです。
「自立する」ということについて、ある小児科医の考えを紹介します。どこかで読んだり聞いたりしたことがある人もいるかもしれませんが、御紹介させていただきます。
小児科医の「熊谷晋一郎(くまがや・しんいちろう)」という方が主張されている考えを紹介します。この方は、生まれてすぐに仮死状態になり、その後遺症で脳性マヒとなり手足が不自由となります。それ以降、成長しながらも車椅子生活を余儀なくされてしまいます。20歳になる前のある時、親元を離れて生活するうちに、次のようなことに気付かされます。
「周りの人にたくさんのことを助けてもらっていて、なんとか生活できているのですが、それを『自立』した生活が出来ているとするならば、他人にどれだけ依存するかが、結局、自立することと大きく結びついている。これまでは母親を中心に世話をしてもらい様々なことを依存していましたが、親元を離れていると他人からは自立していると見られる。しかし、実際は多くの周囲の人たちに依存し、世話を受けている。」このようなことを改めて認識します。そして、たどり着いた考えが、「『自立』とは依存先を増やすこと」という考えです。
「自立」という言葉には、「なんでも自分でする」「大変なことでも自分で解決する」というニュアンスが含まれているように考えがちです。そう考えると「自立」と「依存」は相反する立場なような気がしますが、実は「依存先」を増やすことがかえって「自立」につながることになる。このように、ご自身の体験から考えていくようになります。
普通に生活している私たちの周囲の学校、建物や地域社会においては、まだまだありとあらゆるものが普通の健康な人、健常者向けにできていて、健常者たちにとっては、すでに自身に見合った依存先が複数あり、自分では意識せず当然のようにそれを利用しています。
いつでも利用できるトイレがある、地震などでエレベーターやエスカレーターが止まっても、避難できる非常階段がある、疲れたら腰掛けられるベンチがあるなど、社会は健常者にとって多くの依存先にあふれています。健常者が何もせずとも得られている恩恵を、身体のどこかに不自由なところがある人には、同じようには享受できていません。
「『自立』とは『依存』先を増やすこと」
「依存先」を「頼れる場所」と置き換えることもできます。
新入生のみなさんも高校生活の中で、もしも壁と感じるようなことに出くわしたり、どうしようもなく困ったときには、「頼れる場所」、「相談できる場所」を探してください。本校の中にもたくさんあると思いますし、外部にも信頼できる場所があるはずです。依存できる場所を多く作り、この小児科医の考える「自立」を図ってもらえたらよいと思います。人には、どうしたらよいか分からなくなる時があるものです。どうしようもないときの「頼れる場所」を多く持てるようにすることで、コロナ禍のような予想もできないようなことが発生する時代になってもその「頼れる場所」を探ることで乗り越えられると思います。
今、「自立すること」について、ある小児科医の考えを紹介しました。ぜひ、皆さんなりに考えて、高校生活を送ってください。皆さんの周りには、皆さんを支える家族の方々、指導や支援をする私たち教職員、温かく見守ってくれる地域の方々や卒業生がいます。多くの依存先があります。自分の可能性を信じて、明るく輝く未来をめざして、多くの「依存先」を作りながら、新しい学校生活をスタートさせてください。
保護者の皆様におかれましては、本校を信頼し、緊密な連携を図っていただくとともに、新入生のみなさんが本校を巣立ち社会へ飛び立ち、まさに「自立する」ために、力強い御支援・御協力を賜りますようお願い申し上げます。
結びに、本日御臨席を賜りました保護者の皆様に、あらためて御礼申し上げますとともに、新入生の皆さんが心身ともに健康で充実した高校生活を送ることができるよう、祈念いたしまして、式辞とさせていただきます。
令和五年四月十一日
埼玉県立戸田翔陽高等学校長 野口幸男